アメリカは大都市や一部の地方都市を除いて、車がないと不便なことが多いです。そこで、仕方なく中古車を買う留学生がいます。
特に地方の小都市などは、バスや電車といった交通機関が発達していないことがあります。交通機関があっても人口が密集した中心街だけ周回していて、郊外を含めると非常に範囲が広くなるためバスが巡回できないことは珍しくありません。
日本人が少ないと聞いたので田舎のカレッジを選んだものの、バスや電車がほとんどなく、ホームステイ先からカレッジに通うだけで大変な労力になることがあります。
車がないと不便なため、仕方なく中古車を買う学生がいますが、予備知識なく購入すると、出費がかさみ留学費用にも大きく影響してしまうことがあります。
安く買うなら個人売買、でも、トラブルが最も多い
アメリカではネットオークションが流行る以前から、個人売買が盛んです。一昔前は、新聞や個人売買の専門誌での掲載が多かったですが、現在はネットを介した個人売買も盛んです。
大学のキャンパス内では、卒業式が近かったりすると「車売ります」といった手製のビラがたくさん貼られていることがよくあります。
普通は5000ドルするのに3000ドルで売りに出ているといったように、お店で買うより割安感があったり、年代のわりにはこれはお得じゃないかと思える車が個人売買ではよくあります。
しかし、実際においしい話はめったにないと思っておいた方がよいでしょう。安いにはそれなりの理由があると思って購入する覚悟が必要です。
購入しても結果的に修理が続いて高い車になってしまったというは珍しい話ではありません。私もこのケースに外れず、安物買いの銭失いをしたことがあります。
Photo by John Lloyd
個人売買では盗難車もある
個人売買には、盗難車も出回っています。取引場所が、購入者の自宅ではなく、ショッピングモールの駐車場などといった場合は注意してください。
公共の場所の方が安心できるでしょうと言われるとそんな気がしてしましますが、目的は別にあります。
いかにもそこに住んでいるかのように綺麗なアパートの駐車場で取引されることもあるようですが、後から調べたら売主はそこには住んでいなかったということがあります。
お金を支払って、いざ自分名義に登録しようとき、登録事務所で「これは盗難車です」といわれたら最悪です。
個人売買では、前オーナーにも登録事務所に来てもらって、一緒に車所有者の変更と新規登録を行う用心深さが必要でしょう。
登録事務所では、購入者が売主に小切手を渡している光景を時々見ました。つまり、車所有者の変更届けなどを出す直前に、前オーナー(売主)に支払いをして、事務手続きも同席してもらっているのです。
日本人同士の取引だからといって安心しない
留学生同士の車売買もあります。日本人学生の多いカレッジや大学であれば、日本語でビラを出している人も結構います。
残念なことに、日本人だから安心して買えるかといえばそうでもありません。
どうせ帰国するからということで、故障箇所があっても問題は全く無いと嘘を言って売ってしまうことはよく聞く話です。
アメリカに戻ってくる予定がない学生は、帰国に際して車を放置していくわけには行きませんので、多少強引な売り方をしてくる人もいます。
留学生の中には電話代やアパート代を踏み倒して、さっさと帰国してしまう学生もいます。こういった実情もふまえて、留学生同士、または、日本人同士だからと不用意に安心しないでください。
購入前には、車両履歴の調査が必須
個人売買では、その車の歴史について売主から真相を知ることは難しいと思います。
よいことはたくさん出てくるでしょうが、悪いことがあっても、言葉巧みにごまかされてしまうことは珍しくありません。中古車販売店でも、できるだけ悪い話は出してこないことがあります。
例えば、事故車(追突、横転、人身事故など)、洪水で水没した車、火事にあった車、公害車両、走行距離数がごまかされている車、警察で押収された犯罪者の車など、車には色々な歴史があります。
アメリカにはVIN(車両登録番号)から、車のヒストリーを調べてくれるサービスがあります。そして、その車の履歴から購入するに値するか判断材料を与えてくれます。
車両ヒストリーが分かるCARFAX.comのCM動画↓
アメリカ中古車の調査サイト:★CAR DETECTIVE ★DMV.ORG
調べてみたら、売主が知らないような事故情報(前々オーナーが事故っていた等)が出てくることがあります。
登録されている情報と車種が違ったり、売主と現車オーナーの名前が違うなんてことがあります。登録ミスも考えられなくはありませんが、これは盗難車の可能性が高くなります。
売主によっては、このVINを教えたがらない人がいます。何かを隠しているのかもしれませんし、悪用されると困ると思っているのかもしれません。
VINがわからない時は、ナンバープレート(ライセンスプレート)情報を利用して、Autocheckなどで調べることが可能です。ナンバープレートであれば、特に売主に聞かなくてもこっそりメモしておくことができます。
ただ、ナンバープレートの調査は、現在のオーナーになってからの車に関する情報であって、それ以前のオーナーが所有していたときに何か事故等があってもわかりません。
個人売買では車両検査は必要
個人売買のケースでは、状態が良いように見えても、必ずディーラーなどのサービス工場に持ち込んで車両検査を受けることをおすすめします。
お店の規定料金やチェック項目数により費用は異なりますので、自分の買う車の値段を考慮に入れて検討してください。
例えば、ガソリンスタンドにある修理工場などでは、簡易検査をしてくれることがあります。
簡単な修理とオイル交換くらいしかできないお店では、エンジンルームの見える部分(ベルトやホース類など)、ブレーキ、マフラーなどの簡単な調査をしてくれると思います。
余り十分なものとはいえませんが、購入価格によっては、最低限の検査だけで十分ということもあるでしょう。
専門の修理工場やディーラーでは、50~100箇所チェックというようにサービス度合いによって値段が異なりますが、専用のコンピューター機器を使ってエンジンを調べたり、かなり細かい部分まで調べてくれることが多いです。
見た目はよかったけど、検査してみると様々な問題が出てくることはよくあります。
マフラーが錆びて落ちてきそうだった、ブレーキもパッドを交換しなければならない、エンジンも部品交換が必要。。。色々交換すると1000ドル以上もかかるとなれば、安いと思った割にはそれ相応の値段だったということになるでしょう。
基本的に検査費用は購入者側が負担しますが、その分を車の価格から値引きしてもらうことは交渉次第です。
もし、売主が修理箇所は無いと言っていたらしっかりメモを取っておいて、検査後に修理が必要な箇所がいくつもあれば、話が違うと言ってオーナーと値段交渉することも可能です。
出張で車の検査をしてくれる会社もある
購入前に車両検査をしたいと申し出ると、売主が嫌がることがあります。隠している事故の跡や故障箇所が発覚するのを恐れているかもしれませんし、単にディーラーなどへ車を持っていくのが面倒な人もいます。
そんなときには、出張型の車検査会社を利用してみるのもよいと思います。これでしたら、売主と時間の調整をつけて、売主の自宅で車の調査をしてもらえます。
★出張して車の検査をしてくれる会社:Carchex Automobile Inspections
出張調査をしてくれる会社が近くにないときは、購入を前提に、車両検査と支払日を同じにするといった調整ができるかもしれません。
ディーラーなどで車両検査を予約しておき、検査で大きな問題がなければ、その場で購入しますという申し出を売主にします。面倒くさがりな売主でも、その日に支払ってくれるなら多少無理をしてでも応じてくれることがあります。
ただし、事故の形跡が見つかったり、修理費の見積が500ドル以上になる時は買いませんといった約束を予めしておいた方がよいでしょう。
検査の結果、修理費用が大きかったり、嘘が多い売主であると判断した時は、そのまま取引を続けるのはリスクが高い可能性があります。検査費用が無駄になりますが、早めに購入を断念した方が賢明かもしれません。
初めて買うときは信頼できる中古車販売店がお勧め
個人売買はお得な感じがしますが、安く購入できる裏には、自分で車の状態を調べる手間と時間、嘘を見抜く力などが必要になります。
そこで、初めて現地で購入される方には、ディーラー系(トヨタ、ホンダなど)の中古車店か地元の名前の通った中古車販売店をお勧めします。
日本と同じで、信頼も売っているところは多少お値段が高いですが、長期的に見れば整備のよさやサービスなどで割に合うことも多いと思います。
一般に、保険や登録など必要なことはすべて手配してくれますので、初めて購入される際には安心感もあります。
個人売買の場合は、車の登録や税金の支払いも自分でします。その他、自分にあった保険会社を探したりと、初めての地で英語もままならない状態ではかなり大変です。
ただ、北米ではディーラー系もピンキリで、一概には言えないのが難しいところです。日本ほど整備士のレベルが高くないので、故障の見落としなども平然とあります。
当たり外れの確率が低いという点では、ディーラー系がおすすめですが、地域で長年営んでいる中古車販売会社の方が、地元では信頼が厚いということもあります。
このあたりは、地域の評判やスタッフの対応、設備施設なども見て判断する必要があります。
中古車販売店ならどこでもいいというわけではなく、修理工場がその場になかったり、野ざらしの土地に洗車もされないで車が並べられているような販売店では購入しないことです。
地方の大学では交通手段が少ない
車を買わなければ困るような状態に自分の留学先を選んでしまったとすれば、その選択がまず誤りだったかもしれません。
地方のカレッジや大学には日本人が少ない、田舎の方が生活費などが安く済むといったような理由で留学先を選んだものの、公共交通機関がほとんどなくて移動に困ることがあります。
日本でも地方に行くと車がないと生活が難しい地域がありますが、アメリカは国土が広いこともあって、困ったら歩けばいいということが通用しなくて、日本以上に不便になることがあります。
1日にバスが数本しか出ていないような地域では、ホームステイやアパートから大学に通うだけで疲弊してしまうかもしれません。
車なら15分程度で着く距離でも、バス1台で色々なところを周っていくため1時間以上かかってやっと家に帰れるようなこともあります。
不便な生活の結果、多少無理をしてでも中古車を購入しなければならなくなる学生がいます。
こういった余計な出費がないように、留学先の交通手段を予め確認しておいた方がよいです。
グーグルマップやストリートヴューを見るとその街の様子がわかります。留学予定先になる街の観光情報や市役所などのホームページをみれば、交通機関の情報が出ています。
現地に行ってから、どうやってカレッジや大学に通うのだろうと調べるのではなく、事前に確認しておきましょう。
賢い選択をしよう
アメリカは日本以上に車社会で、車が必需品になる地域が多いです。
車があれば、色々なお店に行ったり、アメリカの各地を旅行したりということが簡単にできるでしょう。しかし、学業が目的でアメリカに行くのであれば、まずは学ぶことが優先されるべきだと思います。
車を持つと自由度が広がる反面、費用負担が増します。また、整備や修理にかかる時間に追われたり、時には事故や盗難といったトラブルに遭うこともあります。
昨今は、アジアから裕福な留学生が増えていて、20歳前後の学生たちが高級車でカレッジや大学に通っていることで、現地でひんしゅくを買っている所があります。
妬みなどもあると思いますが、車にイタズラをされたり、ガラスが割られる、タイヤがパンクさせらるなどのトラブルがあり、一部の現地学生と留学生が対立するような事態になることもあります。
車を購入するのではなく、必要に応じてカーシェアリングやレンタカーを借りるという選択もあります。
カーシャアリングは、大きな大学周辺では非常に盛んになっているので、利用しやすくなっていると思います。大学が協賛しているところでは、大学内にカーシェアリングのスペースがあって、簡単に車を借りられるところも増えています。
平日は学業に集中して、週末にまとめて買い物に行く、ちょっとしたドライブや小旅行で息抜きをするといったときにはレンタカーを借りる方法もおすすめです。
車を買うことも留学の一つの経験かもしれませんが、学業優先の賢い選択をしてください。