2014年9月、全米オープン(アメリカ/ニューヨーク)にて錦織圭選手が準優勝をしました。
優勝は逃してしまいましたが、とても素晴らしい結果で、近い将来、きっと大舞台で優勝してくれるだろうという希望が生まれました。
日本人ではあまりの快挙にメディアは大騒ぎとなりました。
13歳でアメリカに渡ってそこを拠点にしているので、もうあちらの生活に馴染んでいて、日本出身のアメリカの選手という感じがしました。
錦織選手は、元々才能があったそうですが、アメリカへテニス留学をしたことが今の成功に繋がっているようです。
彼は13歳のときに「盛田正明テニスファンド」というスポーツ奨学金を得て渡米しています。それ以来、フロリダを拠点に活躍しています。
盛田正明氏といえば、ソニー副社長であった有名な方です。その盛田氏が世界のトップに立てる選手を養成したいという願いからこのファンドが始まったそうです。
自分もこんなファンドから支援を受けて留学したいと思う方もいると思います。
誰でも申込めるわけではなく、国内でよい成績を残している選手に声がかかって、それから第1次選考、第2次選考というように選考会を実施して、コーチなどが実力を総合的に判断して、最終的に奨学金が支給される選手が決まるようです(執筆時の情報)。
ちなみに錦織選手は、小学生のときに国内ジュニア大会のタイトルを数多く手にしています。
アメリカに渡ってからは楽しいテニス留学とはいかず、選手それぞれに厳しい目標が課されていて、それを達成することで翌年の奨学金を得るというシステムになっています。
当然、目標を達成できない選手は奨学金は継続されず、帰国になるというシビアな世界です。
錦織選手の場合は、この厳しい目標を5年間クリアし続け、その後、プロになったそうです(錦織選手は17歳9ヶ月でプロへ転向)。
奨学金の返済義務はありませんが、世界ランキングの 100 位以内に入ったときには、年間の獲得賞金の10%をファンドに5年間に渡って還元してもらい、それを後の奨学金に使う制度になっているそうです。
スポーツの世界でもアメリカ留学が強いという一端がうかがえる錦織選手の成功ストリーですが、なぜ日本人選手の多くはアメリカへ行きたがるのでしょう。
日本のスポーツ選手がアメリカへ行く(または行きたい)理由の一つは、アメリカの方がトレーニング施設やスタッフが揃っていることが上げられます。それを求めて世界中から優秀な選手が集まります。
これは大学や研究施設でも同様のことが言えますが、世界中から優秀な人材が集まってくるのがアメリカなので、そこへいけば一流の環境で学べる可能性があります。
錦織選手もインタビューの中で、日々、トッププレイヤーと練習や試合をすることで、実力がものすごく上がっていったことを語っていました。
日本の選手でも海外遠征をする機会が増えているようですが、365日その環境にいるのと、2~3週間そこにいるのでは大きな違いがあるでしょう。
オリンピックが直前ともなれば、資金がある選手はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどでトレーニングをしています(日本のしつこいメディアを避けて練習に集中した一面もあるようですが・・・)。
逆に言えば、日本で活躍しているスポーツ選手の多くが、国内のそれほど恵まれない環境でトレーニングしているということです。
もっと環境が悪い国はありますが、世界レベルの実力がありながら、練習する場所もまともに確保できないような日本人選手が非常に多いと思います。
環境に恵まれない理由の一つが資金不足です。もっといえばスポンサーなどからの支援が少ないといってもいいかもしれません。
中小企業の社長さんがポケットマネーでなんとか支えてくれている、といった有名なスポーツ選手が結構いることも事実です。
テニスを例にすれば、日本で活動していても大きな大会が少なく、賞金も少なくて、それだけで生活していくのは大変です。
ゴルフ、野球、サッカーに関しては、日本国内だけでも十分やっていけますが、テニスはそうはいかないと思います。
ゴルフではホールインワン賞といった副賞(メインの賞金ではない)で高級車がもらえたりしますが、ゴルフほどポピュラーではないスポーツではそんな高価な副賞はめったにありません。
日本では、実力は世界レベルでも会社勤めしながら細々とやるしかなく、社会人スポーツの枠を超えられない現状があります。
しかし、アメリカなど海外へ出て行けば、幅広いスポーツの分野で1億円プレイヤーになることも可能です。スポンサーも付いて、何億、何十億という年収を得ている選手が数多くいます。
たとえ、トッププレイヤーになれなくても、大会やイベントなどが非常に多く、スポーツだけで生計を立てることができるところが魅力でしょう。
厳しい現実があって、海外へ行ったからといって誰もが成功できるとは限りません。
実力があっても言葉や文化の壁に阻まれる選手もいるようです。
英語が流暢に話せないと孤立してしまったり、試合では審判への抗議やアピールなども出来ません。
留学した日本のエリート選手たちでも、プロに転向後、それほど成功することなく選手生活を終えている人たちもいます。
それでも、機会が与えられることで、日本の選手が世界に羽ばたくことが出来る可能性が広がるのですから、奨学金制度やスポンサーが増えることに期待したいと思います。
錦織圭選手のサクセスストーリーを基に、数多くの日本人選手がアメリカなど海外で活躍できるようになって欲しいと思います。