2017年3月末、格安旅行会社大手「てるみくらぶ」が倒産して、たくさんの人達が旅行できなかったり、支払い済のはずなのに、旅行途中でホテルや航空券代の支払いをさせられる事態になりました。
留学エージェントを利用して留学する予定の人達は、決して、他人事に思ってはいけない一面のあるニュースです。
無理な格安商法、負債151億円…てるみくらぶ
破産手続き中の旅行会社「てるみくらぶ」(東京都渋谷区)は、先月27日に破綻を明らかにする直前まで集客を続け、8万~9万人の客が旅行に行けなくなったり、現地で宿泊代を請求されたりするなどのトラブルに巻き込まれた。負債総額約151億円に上る破綻の背景に、無理な格安商法が指摘されている。(引用元:読売新聞 2017年04月04日)
「てるみくらぶ」被害者の嘆き続々「一生懸命貯めた150万円が…」
旅行会社「てるみくらぶ」が3月27日、東京地裁に破産を申請し、即日決定された。負債総額は151億円で、影響を与えるとみられる旅行件数は約3万6000件。旅行業者の倒産としては、リーマンショック後最大となる。(引用元:AbemaTimes 2017年3月28日)
旅行会社と留学エージェントは同じ業界
旅行会社と留学エージェントは構造的に似ている部分があります。いずれの会社も、大きな枠では旅行業界です(留学手配ではなく、留学相談やカウンセリングをメインにした留学エージェントを除く)。
お客さんから旅行ツアーの予約を取る旅行会社に対して、留学ツアー(プラン)の予約を取る留学エージェントというのは、留学と旅行という違いはありますが、似たシステムです。
てるみくらぶでは、資金繰りが悪化して、ホテルや航空会社への支払いができなくなりました。留学エージェントでいえば、現地の語学学校やホームステイ先などに支払いができなくなったという事態に相当するでしょう。
てるみくらぶと同様に、留学エージェントが倒産したら、そのエージェントを介して語学学校やコミカレにお金を支払っている人達は、留学できなくなったり、支払ったはずの授業料やホームステイ料金を現地で急に請求されることになるでしょう。
授業料やホームステイ料金は自分で振り込みます!
留学エージェントに、「大手旅行会社でも倒産する時代です。留学できなくなったら困るので、授業料やホームステイ料金は自分で学校に振り込みます。手数料だけ請求してください。」と言ってみてください。
「うちは大丈夫ですよ。安心してください。」と留学エージェントの窓口担当にきっと言われるでしょうが、窓口にいる雇われの人達には、実際の会社の経営状況は分からないことが多いでしょう。
全国に支店を持つある留学エージェントでは、会社が潰れるぎりぎりまで従業員に給料は支払われていたそうです。そのため、従業員たちは経営状況はよくないと薄々感じながらも、まさか、突然潰れるとは思っていなかったようです。
潰れた時の旅行会社や留学エージェントのオフィスでは、顧客対応はほとんどしてくれません。オフィスの扉を締めて、倒産を伝える紙切れ一枚を貼るだけです。
潰れた留学エージェントで窓口対応をしていた人達は、お世話をした学生の心配をしたとしても、自分たちでは何もできません。倒産が決まれば、制度上、勝手に動けなくなります。そして、自分たちの生活の心配しながら、次の仕事を探していることでしょう。
留学エージェントに現金を扱わせないコミカレや大学
制度の整った大学やコミカレの多くは、学生が授業料などを大学側に直接支払うようになっています。
語学コースに通う学生のケースでは、学生はコミカレや大学に着いた後、語学コースのクラス分けのテストを受けます。
テストが終わった後で、どのクラスに入れるか決まって、登録手続きをすると同時に、授業料を支払います。
支払いはクレジットカードが使えるので、窓口で簡単な書類に記入してカードを渡して決済すれば、それで完了です。ホームステイ料金は、ホストファミリーに直接支払うようになっています。
本来はこのように学校や大学側に学生が直接支払うものですが、留学エージェントが仲介することによって料金が割高になったり、倒産で学生の留学資金が消えてしまったりしています。
留学エージェントの過去の不祥事や倒産を鑑みて、こういった当たり前の支払い方法は、大学やコミカレだけではなく、すべての語学学校でも行ってほしいと思います。
必要最低限だけ支払いましょう
できれば、自分で学費や滞在費は、直接、現地の学校やコミカレ等に支払いたいものです。しかし、システム上それができないときは、最低限、必要な分だけ支払いましょう。
留学エージェントでは、手続代行からお金の回収までやって、はじめて現地の学校から報酬をもらえる制度になっていることがあります。
会社によっては、利用者から支払われる留学資金を会社の借金の返済にまず回したり、自分たちで設定した為替レートで支払わせて利益を得たりといったことがあります。このため、自分で現地の学校に支払いたいと言っても、聞いてくれないことがあります。
どうしても会社側に支払ってくださいと言われるなら、1学期分だけにしてみてはいかがでしょう。
もし、1年間留学する予定であったとしても、1年分の留学費用を留学エージェントに前払いするにはリスクがあります。1年分の留学資金はもちろん必要ですが、自分の銀行口座に預けてその残高証明が提出できればいいです。
繰り返しお伝えしていますが、大学・コミカレ・語学学校には、学期ごとに支払うのが普通です。ただし、一部の大学、資格取得コース(特定の資格をとるために必要な受講日数が決まっている)、日本人経営の語学学校などは、半年払いまたは年払いというようにまとめて支払うことがありますので確認が必要です。
特に語学学校や語学コースは、行ってみないと現状が分かりませんし、大学と違って長期間通うとは限りません。1学期通って辞めたくなるような学校も結構あるので、年一括で支払ってしまうと学校が変えられなくなったりと難しい留学生活を強いられる可能性があります。
授業料の支払いスケジュールが不明なら、語学学校やコミカレなどのホームページを自分で確かめてみればすぐにわかります。留学エージェントからもらったパンフレットだけ見ていては分かりません。
うちにお金払わないと割引できませんよ
それでは無料で留学手配できませんよ
学生ビザが取れないかもしれませんよ
などと言われたら、他の留学エージェントも探してみた方がいいでしょう。
昨今は、日本人スタッフまたは日本語の話せるスタッフがいる語学学校が増えています。語学学校のホームページに日本語ページがあったり、スタッフ紹介のページに日本人がいれば、日本語で問い合わせできる確率が高いです。こういった環境であれば、英語が苦手でも、学校に直接質問することが可能でしょう。
留学エージェントからもらう薄っぺらい資料だけを頼りにして、実際に自分が行く語学学校のホームページすら確認しないほど手抜きな留学は考えものです。
本当にすぐに支払われているの?確認できない私・・・
一部の留学エージェントでは、利用者から授業料やホームステイ代などを支払ってもらった後、すぐに現地の学校に振込みます!と宣言しているところがあります。
こういった方法であれば、万が一、留学エージェントが潰れたとしても、お金はすぐに現地の学校に支払われているので、学生に迷惑をかける事はないということになります。
たぶん、すぐに支払ってくれているのだろうと思っても、それをどうやって確認しますか?
留学エージェントの担当者がそう言っているから、留学エージェントから領収書もらったから・・・というのは、何の保証にもならないでしょう。
個人事務所であれば、海外への支払いも含めて一人ですべてを行っている可能性がありますが、ある程度の規模の会社であれば別の部署で会計処理は行われているでしょう。そして、それが確実に行われているのか確認することは外部の人間には難しいです。
自分で現地の語学学校やコミカレにメールを送って、「○○留学エージェントを介して申込んだ者ですが、私の学費とホームステイ料金の支払いは済んでいますか?」と聞ける英語力があったら、わざわざ留学エージェントを利用しないで、自分で留学手続きしていると思います。
つまり、自分では確認できないってことになりませんか?もし、留学エージェントの中に、利用者はどうせ英語話せないし、現地の学校に確認なんてしないだろうと思っているところがあったらちょっと怖いですね。
補償制度はあてにならない
留学エージェントは許認可制になっていないので、仕事内容やルール、責任なども一律ではありません(執筆現在)。極端な話、誰でもできるといってもいいほどです。
留学エージェントによっては、日本旅行業協会(JATA)に加盟していて、法令順守や利用者保護をアピールしているところがあります。他にも協議会や団体などが存在していて、それらの活動は評価しますが、どこに加盟していても、潰れるときは潰れると思います。
日本旅行業協会(JATA)に加盟していれば、会社が倒産したときに補償を受けられる制度がありますが、債権者が多く負債金額が大きいときには期待できません。
てるみくらぶは日本旅行業協会(JATA)に加盟していましたが、150億円近い負債があって、損失を被った人たち全員に対して支払うことができる補償額はたった1億2千万円ほどでしたです。
ちなみに、以前潰れた大手留学エージェントの負債では、10億円くらいが学生に返還されませんでした。
自分で手続きすれば、倒産の不安はない
てるみくらぶのケースでは、自分たちで航空券とホテルを直接予約をしていれば・・・と後悔している人がいるのではないでしょうか。
留学も同様で、自分で現地の語学学校やコミカレに申込んで、直接、お金を支払っていれば、留学エージェント倒産の心配は全くありません。
留学エージェントを利用する大多数の人が、英語に不安があって留学エージェントを利用していると思います。
語学学校やコミカレの語学コースでは、英語を学ぶために行くわけですから、英語ができない人たちを対象にして入学申込や受付をしています。そのため、申込方法なども大学に比べたらものすごく簡素化されていることをまず確認して欲しいと思います。
中国語や韓国語といった日本の学校では余り習わない言語とは違って、一応、何年も学校で英語を学んでいるので、語学学校や語学コースの入学なら、辞書片手に何とかできる人がたくさんいると思います。
それでも、英語の不安からどうしても留学エージェントを使わないと留学できないときには、複数の会社を比べて、慎重に選ぶようにしてください。
留学エージェントに留学資金を預けるリスクを理解するでもご案内しましたが、必要以上にお金を預けない(支払わない)ことも気をつけてください。
会社が倒産してしまったとき、旅行では楽しい休みが台無しになってしまうことになるでしょうが、留学では人生設計そのものに狂いが生じてしまうリスクがあることは理解しておいて欲しいです。