コミュニティー・カレッジの利点と欠点

視聴覚室 留学先の大学・カレッジ選び

前回、アメリカとカナダに留学するとき、コミュニティー・カレッジで学ぶという選択肢があることをご紹介しました。こちらでは、留学生から見たコミュニティー・カレッジ(以下、コミカレ)の利点と欠点をご案内します。

学費が安いコミカレ

現地の学生がコミカレに通う大きな理由の一つに、授業料が大学に比べて大幅に安いことが上げられます。

コミカレは州立が多く、規模が小さいことから大学に通うより安い学費で通うことが可能です。

ただし、州外からの学生と留学生は、通常の学費の数倍を支払う必要があります(こういった制度は大学でも同様です)。それでも、大学に行くことに比べたら費用負担が少ないです。

留学生がアメリカの大学に通うには、一般に年間300万円以上の学費が必要です。もちろん、地域や大学によって費用は上下します。

どのコミカレに行くのか、また、どの大学と比べるかにもよりますが、大学に行く費用に比べて、コミカレでは2~3割以上の費用を抑えられることがあります。 

海外留学したいと思っても、高額な授業料が負担になって、大学への進学を考えてしまう留学生がたくさんいます。そんな時の選択肢の一つとして、コミカレを選ぶ学生が結構いると思います。

入学の英語基準が低いコミカレ

アメリカの大学では、留学生に大学の講義について行けるだけの高い語学力を求めています。そのため、英語力がネックになって、なかなか大学へ入学できない留学生がいます。

コミカレでは、入学基準が低いため、大学に比べて比較的低い英語力でも入学が許されるケースが多いです。

職業訓練や資格コースによっては高いレベルの英語が必要になりますので、一概には言えませんが、大学に比べれば緩い傾向があります。

もし、大学へ進むには語学コースへ1年以上通わないといけない、でも、コミカレであれば少し語学コースに通うだけで正規学部へ入れるとしたら、どちらを選択しますか?

大学にこだわっていつまでも入学すらできな留学生がいる一方、早々にコミカレに入って、こつこつと単位を取って大学編入を狙っている学生はたくさんいます。

大学編入を目指す学生にとっては、コミカレで学んで単位を増やしている内に、同時に英語力もどんどんアップしていくため、希望の大学へ編入できる確率が高くなる可能性もあります。

コミュニティーカレッジ

Photo by Jeffrey Beall

基礎学力をつけやすいコミカレ

アメリカの大学へ直接行くには敷居が高いということから、コミカレで基礎学力を身につけようとする留学生がたくさんいます。

コミカレの語学コースは、比較的クラスのサイズが小さく、英語が学びやすい環境であることから人気があります。アットホームなクラスであったり、地元に密着したコミカレは、ホームステイが選びやすく、イベントなども豊富なことがあります。

英語力とも関係してきますが、語学コースで学んだ後で、すぐ大学レベルの授業についていけるかといえばそう簡単ではありません。

大学の1~2年生の教科では、1クラス100人前後になることがあり、分からないことがあっても個別に教授に質問できないことがあります。

コミカレでは、1クラスの人数が20~30人というように少ない傾向があるので、教授に質問しやすかったり、目を配ってもらえることがあります。

大学のように一定の実力のある学生が揃っているところと違って、コミカレは様々なバックグラウンドの学生が通っていますので、学生の学習支援をしてくれるチューター制度やカウンセリングなどサポートが充実していることがあります。

コミカレでは大学より緩いカルキュラムで運営されていることが多く、留学生にとっては授業に慣れやすかったり、英語のハンデがあっても何とかついていけるのではないかと思います。

大学では、授業の受け方、宿題のやり方、論文等の作成方法など、基本的なことができないと相手にすらしてくれない教授がいますので、それに比べるとコミカレの環境は学生に優しいといえるかもしれません。

大学やコミカレが密集しているような都市では、大学とコミカレの両方で教えている教授がいます。こういった教授に「大学では授業や課題はもっと厳しいんだよ。コミカレの宿題で音を上げている君らは甘いよ」なんて言われたことがあります。

コミカレの学生の質は低い?

コミカレは入学基準が緩いので、留学生だけで見ても、学力ベルの格差は大きいです。

優秀な学生が、学費が安いからとりあえずコミカレに来たというようなときは、愕然としてしまうかもしれません。

学力レベルとは別に、まじめに学ぼうとする学生がいる反面、遊んでいる学生もたくさんいます。

留学生の受入れは、コミカレの大きな収入源となっているため、コミカレの規模に対して多すぎるというくらいの留学生がいるところが珍しくありません。

学習意欲の少ない留学生がたくさんいると、人間関係などで余計なトラブルに巻き込まれやすい環境になりがちです。

留学先での日本人とのつきあいのページでも書きましたが、遊んでいる学生と関わってしまうと留学の本分から外れてしまう可能性が高いです。

せっかく高い志を持って留学したのに、コミカレの人間関係でつまずいてしまって、結局、目指していた資格が取れなかったり、大学へ行く道が閉ざされてしまうことがあります。

こんなことになるなら、わざわざレベルの低いコミカレに行くのではなく、直接、大学を目指すべきだったと思う学生がきっといるでしょう。 

コミカレの教授のレベルはどうなの?

優秀な教授は給料のよい大学へ行くのは当然のことですから、コミカレの教授の質が大学より劣ることを指摘する人がいます。

確かに給料面や名声を気にかければ、コミカレに優秀な教授がやってくることは少ないでしょう。ただ、生徒との時間をもっと取りたいということで、大学からコミカレへ移ってくる方もいます。

私の通ったコミカレでは、熱心な数学教授がいて有名でした。自分の講義の時間以外でも毎日、時には休みの週末までも自習室を周って、誰からでも質問を受けていました。

私のホスト・ファーザーの一人は、トロント大学出の英語教授でしたが、のんびりした生活がしたいと地方都市に引っ越してきて、そこの街にあるコミカレで教えていました。

大学教授がいくら優秀でも、自分の研究や執筆に忙しく、学生との交流を面倒と思っていたり、質問時間をかなり制限している方もいますので、一概には甲乙つけがたいことがあります。

もちろん、有名な教授の下で学びたい、専門的な学問や研究を突き詰めて学びたいと思うならば、英語力や成績をアップさせて、4年制大学や大学院へ行った方がよいでしょう。

大学編入は高い成績をキープすることが必須

大学編入を目指す際には、コミカレでよい成績をキープしなければなりません。なんとか落第せずに授業についていっている程度では、希望する大学への編入は望めないことがあります。

大学編入コースを終了すれば自動的に大学へ進めるわけではなく、大学が要求する「入学基準」を満たさなければなりません。この入学基準は、大学のレベルによって上下します。有名大学では満点(成績がすべてA)に近い成績を要求してくることがあります。

細かい規定があって、選択しなければならない教科が決められていることがあります。この教科は苦手だから避けるというわけにはいきません。

また、成績も細かく規定があります。文系を選ぶ際、英語は「B」以上(A/B/C/Dの4段階評価、それ以下は落第)、ビジネス専攻の場合は、経済や数学が「B」以上でないと最低基準をクリアできないことがあります。もちろん、全体の平均成績も基準が設けられています。

ちょっと恥ずかしい話ですが、私はコミカレでとった必須の基礎経済で「C」の成績を取ってしまいました。

経済や商学部志望でなければ、経済学の成績が「C」でも、全体の成績が規定以上であれば構わなかったのですが。。。

大学の経済学部へ編入するには、経済学の成績は絶対「B」以上でないといけなかったため、再度そのクラスを取る羽目になりました。お金と時間の無駄でした(>_<)

有名大学でもコミカレからなら入りやすい?

コミカレから大学へ編入学する際、直接入学が難しい有名大学でも、コミカレからなら入学できる確率が高くなることがあります。

これは大学にもよるのですが、州立大学の場合は、州内で学んでいる学生、または、提携のあるコミカレからの学生を優先して入学させる制度があります。

たとえば、入学許可する新入生の割合で見た時、州内で学んでいる学生が70%、州外の学生が25%、海外の学生が5%というような枠があります。

こういった新入生の割合は大学によって異なりますが、多くの州立大学では州内の学生を優先して入学させることが知られています。日本から直接申し込む場合は、前出の割合でいけば5%枠内で競うことになるので入学が非常に厳しくなります。

各国から優秀な学生がこの5%枠に申し込んでくると考えると、当然、成績上位の学生から選ばれることになります。入学基準を満たしていたとしても、その上をいく学生がたくさんいれば入学は難しくなります。

ところが、地元のコミカレに通って申込む形式では、入学枠70%の中で審査されることになります。大学によって留学生がどのグループに入るのか判断が異なりますが、一般的には州内で学んでいる学生扱いになるようです。

5%枠と70%枠では、どちらが大学に入りやすいかは明らかです。このため、アメリカの有名大学に直接入学できなかった場合、コミカレに入って高い成績を維持した上で、有名大学へ編入学する道を選んでいる留学生が多くいます。

 大学編入制度を使用するときのリスク

コミカレから編入学する方が、日本から直接入学するより大学に合格しやすいことが知られていますが、必ずしも思い通りに行くとは限りません。

コミカレでは大学側の指定する成績を取らなければなりません。コミカレで成績が悪ければ、希望する大学への道も閉ざされる可能性があります(大学はピンキリなので、希望を下げればどこかに入学はできると思います)。

また、有名大学になれば特に高い成績を要求されますので、コミカレで常に成績上位にいなければ希望の大学には編入学できないことになります。

この辺りのリスクとプレッシャーをどう考えていくのかによって、コミカレを選ぶか否かが、学生によって異なってきます。

コミカレに通った後で大学に編入する方法は、コミカレで実力をつけて大学を目指すわけですが、必ずしもすべての人がその実力を得られるとは限りません。

少し喩え話がずれるかもしれませんが、日本の大学受験に失敗した後、浪人して必死で勉強したとしても、翌年、必ずしも希望の大学には入れいるとは限りません。運もあるでしょうし、その時の競争倍率などにも左右されるでしょう。

それと同様に、コミカレで学んで1~2年後に希望大学に入ろうとしても、予定通りにはいかないことがあります。

コミカレの方が費用を抑えることができると書きましたが、お金を節約して回り道をするより、大学へ直接入学できるのであればその方がよいこともあります。

大学付属の語学コースから始めて正規入学を目指す方が、実力のある学生にとっては、希望する大学に入れる確率が高いことがあります。

大学に入れば、編入学の面倒な手続きのことを考えなくてもよいですし、コミカレで高い成績をキープする心配がありません。

もちろん、大学でもある程度の成績をキープしなければ落第になってしまうのですが、コミカレに通って大学に入れるかどうかの不安を抱えながら、1~2年間も学ぶのは人によっては厳しいことがあるでしょう。

費用を抑えたいのであれば、早く卒業できるように夏休み中の講座なども積極的に取って単位を稼ぐことで、通常4年かかるところを少し早めに卒業することも可能です。

大学によっては、編入学は受付けない、または、編入学の枠(受入人数)が非常に少ないことがあります。コミカレに行けば必ずしも有名大学に入りやすいというわけではありませんので、事前に調べておく必要があります。

自分の留学期間や予算、現在の実力、将来の希望を十分考慮して自分に合った最善の道を模索してみてください。

日本では学べない専門知識、専門技術を学べる

コミカレでは、資格コースも含め、ビジネス一般、不動産、秘書事務、簿記会計、旅行業務、整備士、パイロット、プログラマーなど様々な職業に通じるコースが用意されています。

日本では学べない技術や日本より進んでいる業種も数多くあります。また、現地企業との提携が多く、専門の道を目指すにはとても有利な場合もあります。

現地で就職したいと考えている場合は、即戦力を求める傾向が強いため、単に大卒というより専門技術を得ているとチャンスも多く可能性が広がることがあります。

大学を出てから、専門職を目指すために、コミカレで専門技術を学ぶ人もいます。就職に関わる色々な機会を提供してくれるのがコミカレの一つの役割なのです。

日本では高額な専門コース(例:商用パイロットコース)でも、アメリカやカナダでは日本と比べて安く学べることが多々あります。

また、留学期間を2年以内と限定しているような学生は、中途半端に大学に通うより、コミカレで専門コースの訓練と資格をしっかり取得した方が就職には有利なケースがあります。

専門家を招いて指導をしているコミカレ

資格や専門職を教えるコースでは、講師がどこの大学の出身とか博士号を持っているかといったことは余り関係ないかもしれません。いかに実践に役立つ知識や技術を与えてくれるかが重要になってきます。

多くのコミカレでは、専門家を招いて指導をしています。実績のある元会社経営者、元国際線パイロット、現役ホテルマネジャー、デザイナーやプログラマーなど、その道のプロが指導してくれることも多々あります。

私は現役の通販会社社長の教える「メールオーダー(通信販売)」のコースを興味半分で選択したことがあります。

ゼロからどうやって会社を立ち上げたのか、理論ばかりでく、個人的な失敗談なども豊富に交えて運営のノウハウを事細かに解説してくれてとても参考になりました。

当時、私は大学編入のビジネス学科コースで学んでいたのですが、卓上理論ばかりの授業と比べると、すぐにでもカレッジを辞めて起業したくなるくらい実践的なことを指導してくれました。そして、大卒後、教えに従って小さな通販会社を立ち上げました^^;

 専門技術を求めるときは英語力や就職状況を確認する

専門技術を得るためにコミカレに進むときは、就職状況や施設の充実ぶりを確認することが大切です。

残念ながら、ただコースを提供しているようなところもあります。たとえば、古いパソコンしか無いITコースに進んでも、やっていることは時代遅れの可能性があります。

コミカレを選ぶときは、将来、自分の進みたい業界への就職状況が良いところを選ぶのが賢明です。優秀なコミカレでは、ホームページに卒業生の就職状況などを掲載しているので簡単に調べることができるでしょう。

また、業界で活躍している人のブログやFacebookなどを探して、その人がどこのコミカレや大学を出たのか調べてみると道筋が見えてくるかもしれません。

専門によっては、いきなり実践中心でかなり高度な英語力を要求されることもあります。

現地の学生も就職戦線に勝ち抜くために必死で、留学生だからという甘えの許されない、最悪なケースでは、邪魔者にされてしまうようなコースもあります。

入学できたものの、クラスについていけないということにならないように事前に確認をしてください。

留学生が多いコミカレ・ベスト10

U.S. Newsによるランキングから、留学生が最も多い順のコミカレ・ベスト10(2014-2015)をご紹介します。これら上位には、それぞれのコミカレに1800人~5000人以上の留学生が学んでいます。

留学生が多いからよくないというわけではなく、こういったコミカレの中には大学編入生度が充実しており、優れた大学に編入しやすいため留学生が集まるという一面があります。また、基礎学力がしっかりした学生を編入学生として迎えられることから、大学側からも引き合いがあるそうです。

大学編入コースだけではなく、優れた技術が得られる、就職率が高いために評価の高いコミカレもあります。

こういったランキングを一つの目安にして、他のコミカレも含めて詳しく調べていくきっかけにしていだだければと思います。

1位:Houston Community College(ヒューストン、テキサス州)

2位:Santa Monica College(サンタモニカ、カリフォルニア州)

3位:De Anza College(クパチーノ、カリフォルニア州)

4位:Seattle Central College(シアトル、ワシントン州)

5位:Lone Star College(ザ・ウッドランズ、テキサス州)

6位:Diablo Valley College(プレザント・ヒル、カリフォルニア州)

7位:Montgomery College(ロックビル、メリーランド州)

8位:Johnson County Community College(オーバーランドパーク、カンザス州)

9位:Northern Virginia Community College(アナンデール、バージニア州)

10位:Green River Community College(オーバーン、ワシントン州)

参考リンク: 

編入学で大学を目指す

カナダのコミュニティー・カレッジについて

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